Research

研究

スポーツなどの複雑なデータを対象に、新しい統計モデリング手法の開発とその応用に取り組んでいます。 また、スポーツ現場や実務家との共同研究を通じて、新たなモデル開発や現場への還元を行っています。

ここでは、現在の研究テーマを中心に、近年の研究成果を紹介します。

01

統計モデルの開発と応用

複雑なデータの特徴や潜在構造を捉えるための、新しい統計モデルと計算手法を研究しています。

サッカー選手の軌跡の関数化
ある試合、ある選手の10秒間の軌跡を関数化したもの。上がB-スプライン、下がNURBS。B-スプラインでは表現しきれない形を表現できている。データは Metrica Sports Sample Data より。

Functional Data Analysis

複雑な軌跡データを、関数として表現する

人や物体の移動軌跡の特徴は、どのようにして表現することができるでしょうか。

関数データ解析は、複雑なデータを関数として表現し、その構造を解析するための方法です。

スポーツ選手の移動軌跡などの軌跡データは、平面上の関数として表すことができます。しかし、急激な方向転換や局所的な形状変化を含み、従来の関数データ解析の手法ではこれを十分に表現することができないことがあります。

本研究では、NURBS(非一様有理Bスプライン)を関数データ解析へ導入し、複雑な軌跡データを柔軟に表現する新しい方法を開発するとともに、それを用いた軌跡データの分析手法について研究しています。

研究のポイント

  • 急激な方向転換や局所的な形状変化を含む平面上の関数データの表現方法および推定方法の構築
  • 平面上の関数データに対するクラスタリングと、得られたパラメータによる軌跡構造の解釈
  • 実際の軌跡データへの応用
関数データ解析NURBS非線形OLSクラスタリング

関連研究

  • NURBS-based Functional Data Analysis for Trajectory Data(仮称)執筆準備中
ゲーゲンプレス行列のBayesian GPMF
2015-16プレミアリーグにおけるゲーゲンプレス回数を提案手法で行列分解して得られた基底行列(上)と係数行列(下)。チームごと、試合ごとのプレス傾向の変化が読み取れます。

Non-negative Matrix Factorization

カウントデータから、隠れた特徴を見つける

特定イベントの生起回数を表すデータから、隠れた特徴をどのように見つければよいでしょうか。

非負値行列因子分解は、非負のデータを少数の特徴の組み合わせとして表現することで、データの背後にある潜在的な構造を抽出する方法です。

特定イベントの生起回数からなるカウントデータは、すべての要素が0以上となる非負値行列として表すことができます。このようなデータには、表面からは見えにくい特徴やパターンが潜んでおり、それらを抽出することが重要になります。

本研究では、一般化ポアソン分布に基づく新しい非負値行列因子分解を開発するとともに、ベイズ推論による推定方法についても研究しています。また、サッカーにおけるゲーゲンプレスの傾向分析をはじめ、スポーツデータへの応用も進めています。

研究のポイント

  • 一般化ポアソン分布に基づく非負値行列因子分解モデルの開発
  • ベイズ推論による推定アルゴリズムの構築
  • サッカーにおけるゲーゲンプレス傾向の分析への応用
非負値行列因子分解過分散モデル一般化ポアソン分布ベイズ推論

関連研究

卓球のサーブの分布
2022-23男子Tリーグ張本選手の打球回数分布(上)。赤い折れ線の確率分布が度数分布をよく表しています。下は分布クラスタリングの結果。

Alternating Geometric Distribution

ラリーの長さを、確率分布で表現する

卓球やバドミントンのラリーの長さ(打球回数)は、どのような確率法則に従っているのでしょうか。

確率分布モデルは、データがどのような規則性をもって現れるかを表現するための統計モデルです。

卓球やバドミントンなどのネットスポーツでは、1ラリー中の打球回数が重要な指標となります。しかし、その分布は既存の確率分布では十分に表現できません。

そこで、ネットスポーツにおけるラリーの特徴を捉える新しい確率分布族(交互幾何分布族)を開発し、その理論を構築するとともに、実データへの適用や試合分析への応用を行っています。

研究のポイント

  • 1ラリー中の打球回数を表す確率分布モデル
  • 交互幾何分布族の理論的性質の解明
  • 卓球などのネットスポーツにおける打球回数分布への適用
交互幾何分布族0-1変形分布分布クラスタリング

関連研究

方向データを円周上に表した可視化
MLB2024シーズンにおける打者の打球角度(記号)と当てはめた確率分布(ヒートマップ)の図(上)と、分布クラスタリングの結果の図(下)。

Directional Statistics

打者を、打球方向分布から分類する

打球方向の分布から、打撃傾向の似た選手を見つけることはできるでしょうか。

方向統計学と分布クラスタリングを用いて、方向をもつデータの分布全体から対象の特徴を捉えます。

野球の打球方向のように、水平方向と鉛直方向をあわせて表されるデータは、超球面上の方向データとして扱うことができます。平均的な方向だけでは、打球の広がりや複数の方向への偏りなど、選手の特徴を十分に表現できません。

本研究では、超球面上の確率分布そのものを比較する新しい分布クラスタリング手法を開発し、野球における打球方向分布を用いた打者の分類へ応用しています。

研究のポイント

  • 分布クラスタリング
  • 混合 von Mises-Fisher 分布
  • 野球の打球方向分布への応用
分布クラスタリングK-medoids混合 von Mises-Fisher 分布スライス Wasserstein 距離

関連研究

  • 超球上の確率分布に対する分布クラスタリングとその応用計算機統計学, to appear.

02

スポーツデータサイエンスの実践

スポーツ現場との共同研究を通じて、実際の課題から新しいデータ分析手法やAIシステムを生み出し、その成果を現場へ還元するスポーツデータサイエンスに取り組んでいます。

Professional Baseball Analytics

プロ野球のトラッキングデータを分析する

プロ野球球団と連携し、トラッキングデータを用いたデータ分析に取り組んでいます。

球団から提示された実際の課題を対象として、学生が中心となってトラッキングデータを分析し、その結果を現場へフィードバックしました。

分析内容の詳細は公開できませんが、実際のスポーツ現場における課題をデータサイエンスによって解決することを目的とした共同研究を行っています。

Football Analytics

大学サッカーでも使えるxGを開発する

大学サッカーでも利用できるExpected Goals(xG)モデルの開発に取り組んでいます。

プロリーグとは異なり、トラッキングデータを利用できない環境でも有用なxGを算出できるよう、利用可能な情報だけを用いたモデルの構築を目指しています。

画像解析によって試合映像から必要な情報を取得し、その情報からxGを算出するシステムの開発を大学院生とともに進めています。

Esports Analytics

eスポーツをデータで可視化する

セガ公式ぷよぷよeスポーツ大会で利用される選手スタッツを開発しました。

開発したスタッツは大会の解説でも利用され、プレーを多面的に評価するための指標として活用されました。

また、学生プロジェクトでは、画像解析とAIを活用し、自動盤面抽出やスタッツ計算を行う高度な分析システムの開発も進めています。

Table Tennis Analytics

卓球の分析をAIで支援する

女子Tリーグチームとの共同研究として、映像解析を用いた分析支援システムの開発に取り組んでいます。

スポーツ現場の分析業務を支援するため、画像解析やAI技術を活用したシステム開発を進めています。

試合映像からラリーを自動的に検出し、サーブ位置やラリー中の打球回数などの情報を自動取得することを目指しています。

University Baseball Analytics

大学野球をデータ分析で支援する

大学硬式野球部と連携し、試合や練習で得られるデータの分析を行っています。

学生が中心となって試合データや練習データを分析し、その結果をチームへフィードバックしています。

スポーツ現場との継続的な連携を通じて、分析結果を競技力向上へ結びつけるための実践的なデータ活用を進めています。